旅行記 7月の利尻・礼文【第7回】 8時間コーストレッキング(後編)
7月21日(月) |
13:00
8時間コースの終盤、礼文島西海岸にて。
これまで我々を導いてきた“道”はプッツリと途切れた。
目の前にあるのは、波が押し寄せる荒々しい海岸のみ。
ここで我々は星観荘の主人から聞いた情報を思い出した。
「途中、海岸に出たところで道がなくなるが、そのまま海岸を進むこと」。
過去に「道がないぞ」と電話連絡してきた客がいたらしく、それ以降、そのような案内しているそうだ。
いただいた情報に従い、海岸を進む。
石がゴロゴロと転がっており、登山靴では歩きにくいものの、波もそこまで荒くないためサクサクと進む。
13:20
荒々しい海岸を歩いていると、小さな集落が現れた。
猫の額ほどの平地に寄り添うように建ち並ぶ民家と漁師の作業小屋。
宇遠内集落である。
車道が通じておらず、唯一の交通手段が船という、礼文島随一の秘境集落だ。
集落の中に、おばちゃんが切り盛りしている休憩所があったので、ここで小休止。
チュンとエビはビールを、終盤戦の体力が心配な私はスポーツドリンクを注文する。
暑い中歩いてきたので、冷えた飲み物が体中に染み渡る!
ビールには刺身がセットでついてきたので、私もちょっといただいた。
休憩の後はいよいよ終盤戦。
西海岸にある宇遠内から峠を越え、東海岸の香深井集落を目指す。
縦に長い礼文島を横断するルートで、直線距離では3kmほどの道のりだ。
休憩で気の抜けた我々に、急な坂道が襲い掛かる。
全体的に砂っぽい荒れた路面で、滑りやすいので、ペースがいきなりダウンする。
登りの区間は短かったが、休憩をはさみつつなんとか登りきった。
標高188メートルの峠を越え、下りへ転じる。
足の疲労をかばいながら、ゆっくりと下る。
14:30
久々の車道、礼文林道に出る。
ここまで来れば、あとは幅広の林道を集落まで歩くだけ!
道も平坦になり、足取りも軽くなった気がした。
15:00
ついに8時間コース踏破!
Wikipediaには「11時間くらいかかる」とか、恐ろしいことが書いてあったが、何とか8時間以内ににゴールすることができた。
これまで苦しい登山をしたこともあったが、達成感は今まで以上のものであった。
疲労は凄まじいが、怪我やトラブルもなく無事に歩きとおせたことは何よりだろう。
今夜泊まる桃岩荘ユースホステルとの待ち合わせ場所である、香深港までのバスは行ってしまったばかり。
5kmほど歩くという発想は、今の我々にはなく、満場一致でタクシーを呼ぶことにした。
トレッキングの後はやはり温泉だ。
昨日はカラスの行水であった礼文島温泉にゆっくりと浸かる。
露天風呂で、疲労が抜けてゆくのを感じながら、対岸の利尻山をボーっと眺めていた。
17:25
稚内からの最終フェリーが着く時間に、今夜の宿と待ち合わせしている。
今晩泊まるのは、昔ながらのバンカラな雰囲気を残すユースホステル、桃岩荘だ。
上の写真に、旗を振るバンカラな青年が写っているが、彼は桃岩荘のヘルパーだ。
船の到着に合わせ、岸壁で「おかえりなさい!」と叫んでいる。
礼文島に上陸する際には誰もが目にする、名物とも言うべき光景だ。
バンカラな青年から応援団のような口調で接客を受け、年季の入った送迎車に乗せられる。
そんな勢いに若干圧倒されたまま、送迎車は出発する。
車内ではヘルパーによる礼文島や桃岩荘に関するクイズが出され、楽しい雰囲気のまま宿へと向かっていく。
15分ほどで桃岩荘に到着だ。
桃岩荘は漁師の番屋を改築したものであり、1870年に建造された年季の入った建物だ。
驚くべきは外観だけではない。
玄関をくぐるとヘルパー、宿泊者が勢ぞろいしており、「おかえりなさい」の大合唱。
我々も負けずに大声で「ただいま!」と返す。
中は時代を感じさせる広々とした板の間に囲炉裏!
しかしその古さを感じさせない程に清潔に掃除されており、心地よい。
またまたバンカラな口調で、館内設備や規則について説明を受け、自分のベッドへ向かう。
夕食後は桃岩荘名物のミーティング。
ヘルパーたちによる礼文島の紹介や歌唱指導が、面白おかしく行われる。
歌唱指導では、懐メロ(フォークソングが多い)や昔のアニソンなどをみんなで手を叩きながら、時には踊りながら合唱する。
それだけではなく、桃岩荘で毎年作られるオリジナル曲も歌う。
全く知らない曲だが、耳に残るメロディーであり、3番まで歌う頃には一緒に口ずさんでいた。
羞恥心を捨て、思い切り歌って踊り、とても楽しい夜になった。
現在ではこういったミーティングが行われているユースホステルはほぼ絶滅しており、桃岩荘は全国でもかなり珍しい存在になっている。
人によって好き嫌いが分かれそうな宿であるが、私はもう一度泊まってみたい、と思った。
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|投稿:2014.11.14 | 最終更新:2019.02.20 |カテゴリ: 旅行記